「分からないところが分からない」状態からの大逆転! 筑波大医学部合格をつかんだパーソナルトレーナーとの1年間
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1. 要求される知識量と思考力〜日本史・世界史 vs 地理 Part 1〜

大学受験の日本史の特徴は、まず何と言っても、暗記事項が圧倒的に多いということです。

山川出版社の日本史用語集に掲載されている用語数は、解説がついているものに限定すると6,600語、解説がついていないものも含めると10,000語を超えています。もちろん日本史の学習は用語の暗記が全てではありませんが、大学受験勉強を進めていく上で、暗記だけでも膨大な時間と労力がかかることは覚悟しておいた方がよいでしょう。その反面、学習内容をきちんと理解し、暗記によって知識を定着させることができれば、問題を解くのに必要な思考力を鍛えるのはさほど難しくないため、得点を安定させやすいという見方もできます。

要求される知識量に関しては、日本史と世界史にそれほどの違いはありません。用語集に掲載されている用語数を基準にすると、日本史が6,600語であるのに対し、世界史は5,600語です。一見、日本史の方が多いように見えますが、高校日本史の学習内容のなかには、中学までの既習事項が数多く含まれていますので、日本史と世界史の差はほとんどないと考えてよいでしょう。

要求される思考力に関しても、日本史と世界史は類似しています。日本史と世界史の入試問題に典型的な形式は、問題文の空欄に人名や用語などを補充する形式、説明の正誤を判定する形式、そしていくつかの出来事を年代順に配列する形式です。このような形式の問題は、思考力というより単純に知識の量と正確さを要求しています。また、大学によっては、視覚的資料や統計データに基づいて考察させる問題や、初見の史料を読解させる問題、あるいは歴史的意義や時代背景を考察し論述させる問題など、データの分析力や文章読解力、論理的思考力を要求する問題が出題されることもあります。

いずれにせよ、知識の量と正確さを問う問題であれ、思考力を要求する問題であれ、日本史と世界史の考え方はとてもよく似ており、思考系の問題形式より知識系の方が多数派を占めるという点においても、日本史と世界史は共通しています。

このように知識の正確な理解と暗記が重視される日本史・世界史とは対照的に、地理では要求される知識量が比較的少ないという特徴があります。ここでも山川出版社の用語集の掲載語数を基準にすると、地理はわずか3,400語と日本史の半数程度です。しかしその反面、地理の入試問題では、与えられた地図や写真などの視覚的資料や、表・グラフなどの統計データをその場で読み取り、持っている知識と関連づけて思考し判断する能力が、日本史・世界史より高い程度・高い頻度で要求されます。そのため、地理の基礎知識の習得は比較的短時間で済むものの、読解力や思考力の養成により多くの時間をかけなければ得点が安定しにくいという一面も持っています。

2. 受験科目選択における制約〜日本史・世界史 vs 地理 Part 2〜

入試問題を解くために要求される知識量と思考力だけでなく、入試制度上の制約に関しても、日本史と世界史には共通点が多く、地理とは対照的です。

そのことが最も顕著に現れるのは、私立大学文系学部(私大文系)の一般入試における科目選択です。私大文系の一般入試では、3教科を選択して受験するのが一般的で、英語と国語(または小論文)が必須、残りの1科目を地理・歴史・公民・数学から選択する場合が多いです。その際、日本史と世界史はほぼ全ての私大文系で選択することができますが、それ以外の科目は選択できないことが多いので注意が必要です。特に、地理を選択できる大学・学部・学科は、早稲田大学では教育学部文科系(A方式)のみ、慶應義塾大学では商学部(A・B方式)のみに限られるなど、日本史・世界史と比べてはるかに制約が大きくなります。私大文系を志望する受験生は、選択肢の幅が広くなるように、日本史または世界史を選択・履修しておくのが無難です。

私大文系の一般入試ほど顕著ではありませんが、国公立大学文系学部(国公立文系)2次試験の受験科目選択に関しても、同様のことが言えます。国公立文系の2次試験では、国語・英語・数学の3教科型が一般的ですが、社会科目の選択・受験が必須または可能な大学・学部・学科も、ごく少数ながら存在します。それらのうちのほとんどは、日本史・世界史・地理から自由に選択することができますが、一部の国公立大学・学部・学科では地理を選択できないので注意してください。たとえば、筑波大学(社会・国際学群・社会学類)や千葉大学(文学部・史学科、日本文化学科、国際言語文化学科/国際教養学部)、東京外国語大学(言語文化学部/国際社会学部)、東京藝術大学(美術学部・芸術学科)などでは、地理を選択することができません。

なお、国公立大学のセンター試験に関する限り、文系であろうと理系であろうと、日本史・世界史・地理のあいだにほとんど違いはありませんので安心してください。

以上、日本史・世界史・地理に関して、入試制度の一般的な傾向を説明しました。細かい条件については大学・学部・学科ごとに規定しているので、各自の志望に応じて入試募集要項を参照するようにしてください。志望大学・学部・学科をまだ絞りきれていない人も、受験する可能性のある大学の受験科目規定を参照し、選択肢の幅を狭めない科目選択をするよう心がけましょう。

3. 知識の整理術に現れる違い〜日本史 vs 世界史〜

さて、ここまでの説明で、歴史(日本史・世界史)と地理の違いはある程度明確になったと思いますので、次に、肝心の日本史と世界史の違いはどこにあるのかについて考えていきたいと思います。

最もわかりやすい違いは、「日本史は狭く深く、世界史は広く浅く」という点にあります。日本史は、対象となる主な地域が日本と周辺の東アジアとごく狭い地域に限られているため、そのぶん、個々の歴史的事象の内容について詳しく学び、それらの時間的な推移や展開も細かく学んでいくことになります。

一方、世界史の学習では、対象となる地域が広範囲にまたがるため、各地域の歴史については概要の把握にとどまりますが、地域相互の関連性をつかむのが日本史よりも大変です。要約すると、「日本史では歴史の流れをタテに見る視点が重要であり、世界史では地域間の交流をヨコに見る視点がより重要である」と言うことができます。

この違いは、日本史と世界史の知識の整理の仕方にも関わってきます。どちらの科目もいわゆる暗記科目であるとはいえ、膨大な知識をバラバラのまま闇雲に暗記しようとしてもうまくいきません。一度覚えた事柄を長期記憶として定着させていくためには、事柄同士の共通点・相違点やその他の関連性に注意しながら、系統立てて覚えていくという作業がどうしても必要になるのです。その際、日本史と世界史とでは、苦労する点が異なります。

日本史では、各時代の政治や経済や文化の特徴をとにかく細かく勉強するので、そのぶん内容や名称が似ているけれど微妙に異なる事項がたくさん出てきます。日本史の勉強では、この紛らわしい違いを区別するのが大変です。たとえば、鎌倉幕府の東北地方の統治拠点は「奥州総奉行」でしたが、建武の新政では「陸奥将軍府」、室町幕府では「奥州探題」と呼んでいました。同じ東北地方の統治拠点でも時代によって呼び方が変わるのです。これは紛らわしい名称の例ですが、内容に関しても同様のことが言えます。だから日本史の入試問題では正誤問題が作りやすく、細かい違いを聞いてくる問題が頻出します。このように日本史には紛らわしい事項が無数に存在するので、それらを意識的に区別しながら覚えていく作業が重要になります。

一方、世界史では、歴史の流れを地域ごとに少しずつ順々に勉強していくので、一つの地域のタテの流れ、あるいは一つの時代のヨコの繋がりが見えにくいという難点があります。たとえば、山川出版社の『詳説世界史B』では、第5章でヨーロッパの中世を学びますが、その後第6章で宋と元の時代の中国をやり、第7章で明と清の時代の中国と、トルコ・イラン・インドをやり、そしてようやく第8章でヨーロッパに戻ってきて近世を学ぶことになります。ヨーロッパの中世から近世に移るまでの間に、実に50頁も入っているのです。このように世界史では、各地域・各時代の歴史を転々としつつバラバラに学んでいくため、ある程度学習が進んだら、年表や地図を駆使してタテ・ヨコの繋がりをまとめ上げる作業が必要になります。

以上を要約すると次のようになるでしょう。

日本史
・対象地域が狭く、内容は詳細に学ぶ
・内容や名称が似ていて紛らわしいものが多い
・似ているものの細かい違いを区別する作業が大変

世界史
・対象地域が広く、内容は概要を学ぶ
・各地域・各時代の歴史をバラバラに学ぶ
・時代・地域相互の関連をまとめあげる作業が大変

4. 有利不利論はナンセンス!〜自分の価値観と選択を信じよう〜

「大学受験において日本史と世界史ではどちらが有利なのか」という議論は昔から存在し、これからも絶えることはないと思いますが、結論から言うと、この種の議論には耳を傾けないほうがよいでしょう。

なぜかというと、受験生にとってどちらが有利なのかを公平な目で判断できる人などどこにも存在しないからです。確かに、受験生の頃に日本史と世界史の勉強に同じくらいの時間と労力を費やし、特定の大学の日本史と世界史の入試問題を解き比べた人ならば、公平に判断することができるかもしれません。しかし、大半の受験生は日本史か世界史どちらかに絞って勉強するわけですし、入試で地歴2科目を選択しなければならない東大の受験生でも、一方の科目をメインに勉強して他方の勉強は最低限に留めるという戦略が基本です。

したがって、「日本史と世界史を等分に勉強する」という条件がある時点で、きわめて特殊な受験生ということになりますから、そのような人の判断がいかに公平なものだったとしても、条件が異なる大半の受験生にとっては全く参考にならないでしょう。日本史・世界史の有利・不利を言っている人は、自分の成功体験または失敗体験のみに基づいて偏った意見を述べているだけなので、鵜呑みにしないよう注意しましょう。(たとえば、受験生の頃に日本史だけ勉強して受験に成功した人は、世界史のことを何も知らないのに日本史が有利と主張しがちです。)

そもそも日本史と世界史の勉強の大変さや面白さ、得点への結びつきやすさといったものは、個々人の相性に依存する部分が大きいので、偏った立場からのアドバイスを聞くくらいなら、自分の興味・関心などの価値観の方が余程信頼に値します。教科書や資料集をめくってみてどちらが興味をそそるか、海外旅行と国内旅行だったらどちらに行きたいと思うか、エキゾチックなものが好きか、伝統的なものや和風なものに惹かれるか、将来国際的な仕事をしたいか、日本の社会に根ざした仕事をしたいか……。このような問いを自分自身に投げかけてみてください。学校で日本史と世界史の授業をどちらも履修できるチャンスがあるなら、両方それなりに勉強してみて、身につきやすく結果に現れやすかった方を受験科目として選択し、そちらに特化して勉強していくとよいでしょう。

このように自分の価値観や相性に照らして決断を下せば、いつか伸び悩んで自分の選択に迷いが生じたときに、周囲の無責任な情報に振り回されずに済み、困難にめげずに勉強をやり抜く意志につながります。