目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向と特徴(概要)
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
    1. 微分・積分(極限・微分・積分)
    2. 空間ベクトル・空間図形
    3. 確率
    4. その他:数と式
    5. その他:複素数平面
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の振り返り:公式や定理の総復習
    2. 典型・有名問題の解法を押さえる
    3. 解法のブラッシュアップ
    4. 応用レベルの演習:数学的な思考力を鍛える
    5. 過去問・模擬試験を用いた演習

1. はじめに

慶應義塾大学理工学部は、私大理工系の中では早稲田大学基幹・先進・創造理工学部と並んで国内最難関に君臨します。受験者層は、早慶を第一志望としている方よりも、東大や京大、東工大を第一志望としている方が多く、合格を勝ち取るためには相当な実力を求められます。

数学の試験を見ても、問題集に掲載されているような典型的な問題は多いとは言えません。むしろ、120分の中できっちり考え抜くタフな思考力と深い洞察力を見ているといえます。東大や京大、東工大を目指す方と同じようなカリキュラムで対策していく方が、より確度が増すでしょう。

本記事では、慶應義塾大学理工学部の対策・勉強法について、おすすめ参考書・問題集のリストを交えながら徹底解明を行います。皆さんのお役に立てる部分がありましたら、幸いです。

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2. 概要

2.1. 試験日

2018(平成30)年2月12日(月)

2.2. 試験範囲・試験時間・解答形式

(試験範囲)
数学I・数学II・数学III・数学A・数学B
※数学Aからは「場合の数と確率」・「整数の性質」・「図形の性質」を出題範囲とする。
※数学Bからは「数列」・「ベクトル」を出題範囲とする。

(試験時間)
120分、計5問

(解答形式)
全問記述式(解答のみ埋める問題と途中過程を論述するタイプの問題が混在)です。計算用紙は問題用紙に挟み込まれており、量も十分ありますので足りなくなるといった心配はないでしょう。

2.3. 配点

150点(合計500点)

2.4.出題の傾向と特徴(概要)

例年、120分で大問5つが出題されています。解答形式は記述(答えのみ)と論述(途中過程を書く)が混在しています。なお、一つ一つの問題文は私立大学によくある長文の誘導形式であったり、通常問題集によく掲載されているような分量での出題だったりと様々です。

問題自体は、表面上典型問題に見えないような表現になっていることが多く、問題文をじっくり読み込んで本質をつかむことができないと何をすればいいか途方にくれてしまいます。とはいえ、激しく難問ばかりということはありません。じっくり問題文を読み、状況を把握することができれば、何をすればよいか明確になることが多くあります。

そのため、まずは与えられた状況を整理する、ゴールから逆算して一歩目を決める、実験して性質を調べるなど、問題文をじっくりと読み解く力を養っていきましょう。

加えて、数列と極限、数列と確率、確率と積分、複素数平面と整数などいろいろな単元が融合されて出題されることも多いので、単元別の典型問題の解法パターンを覚えているだけでは太刀打ちできません。過去問演習に入る前に、『1対1対応の演習』で一通り受験標準レベルの問題について理解を深め、『理系数学の良問プラチカ』や『新数学スタンダード演習』などの受験標準レベルの問題集でアウトプットの練習をしておきましょう。

頻出単元について。「数Ⅲ微分・積分」「空間図形(空間ベクトル)」「確率」はトップレベルかつ難易度が高くなることが多くあります。次いで、整数、図形と方程式、三角関数、数と式が頻出です。新課程開始後は「複素数平面」が連続して大問で出題されているため、今後も対策は必須でしょう。

解答のみ記述する問題では、穴埋めながら相当な計算量を要求されており、一筋縄でいかないものもしばしばあります。途中過程を論述する問題では、証明問題となっていることも多くありますので、私立大学ではありますが国公立大学のような問題演習をしていくことのほうが、結果的に本番で役立つといえます。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 微分・積分(極限・微分・積分)

理系入試の頻出単元といえば、やはり数Ⅲの微積分でしょう。単純な計算問題やグラフ、極値を問うような問題ではなく、30-40分あたりかけないと大問まるまる完答できないほどの分量で出題されます。

内容について、x軸やy軸ではなくy=x周りの回転体の体積や、定積分と不等式の融合、短冊での評価など、難関大では有名なテーマが多く出題されています。標準レベルの問題演習はしっかり行ってくださいね。

ただし、典型・有名なテーマであっても、問題文の表現など、見た目にはそうであることがわかりにくくなっています。計算が煩雑になることも多く、相当量の演習経験を積んでおかないと太刀打ちできないでしょう。

まず、極限・微分・積分計算がスムーズに行かないようではお話になりません。しっかりとした計算トレーニングを積んでおきましょう。例えば、積分計算でいえば、∫1/(a^2+x^2)dxでx=atanθと置換できる程度のレベルで終わるのではなく、仮に∫1/(x^2+x+1)dxのようなものでも計算が実行できるようにしておきましょう(x^2+x+1=(x+½)^2+3/4と平方完成できるので、x+½=√3/2tanθと置換します)。区分求積法についても積分区間が[0, 1]ではないようなパターンでも処理できるように訓練しておくべきといえます。不等式を作ってはさみうちの原理を適用するパターンは当然トレーニングしておきましょう。

その後、有名難関大で頻出のテーマについては性質を熟知できるレベルでしっかりと押さえてください。例えば、リサジュー曲線やカテナリーについては類題をいくつか演習した上で、その性質をまとめておくと良いでしょう。

問題集であれば、『大学への数学 1対1対応の演習』で一通りの典型解法を理解した後、『理系数学の良問プラチカ 数学Ⅲ』や『医学部攻略の数学Ⅲ』『数学Ⅲスタンダード演習』などの問題集で慣れておいてください。

なお、基本は数Ⅲからの出題となりますが、数年に一度、3次関数がテーマになっているので、数Ⅱの微積分についても標準レベル以上の問題を演習しておく必要があります。

3.2 空間ベクトル・空間図形

空間ベクトル・空間図形も微分・積分同様、理系入試では頻出中の頻出単元ですが、慶應理工でももちろん頻出テーマの一つです。空間ベクトルは、苦手とする人が多い分野ですが、登場する定理は平面ベクトルのそれとほとんど同じ。基本は3つの1次独立なベクトルを用いて↑OP=s↑OA+t↑OB+u↑OCなどと設定し、問題文の日本語とそれらを整理して描いた図を参考に、共面条件や直行条件(内積=0)といった状況を見抜いて、立式に反映させましょう。

また、適切な切断面を考えて、平面として性質を見抜くことも重要です。数Aの図形の性質や、三角比といった話題が関係してきますので、こういった図形関係の単元とはセットで理解を深めておきましょう。

3.3 確率

確率は医学部同様、頻出です。確率漸化式の形で登場することが多いので、大量に演習して解き慣れておきましょう。確率漸化式の基本はn回目とn+1回目(必要であれば、さらにn+2回目)についての状態遷移図を描くこと。標準レベル以上まで取り組んで、得意にしておくことが望ましいです。

確率漸化式でなくとも、文字が登場する試行などには慣れておきましょう。難関校であれば、慶應に限らず、「試行をn回繰り返す」「k回目の確率をP(k)とおく」など、パラメータ(文字)が頻繁に登場します。nCrやnPrを階乗を用いて表すことができないとその先の計算を進められないことが多いので、要注意です。

旧帝以上の国公立レベルの問題が演習教材としてちょうどよいでしょう。

3.4 その他:数と式

絶対値の処理に関する問題がよく出ています。数学Ⅰの範囲を集中的に学習する方はあまり多くないかもしれませんが、いざというときに処理に困るということは避けたいところです。うまく計算・処理を行う力は、数学の実力の一つです。

3.5 その他:複素数平面

2015年の新課程入試より新しく登場した単元です。小問、大問とランクは変わりますが、連続で出題されているため、今後も対策は必須でしょう。複素数平面には、ベクトル同様、代数的な側面と幾何(図形)的な側面の2つが混在しています。それらの関連性を考えながら、演習を進めてください。例えば、複素数の商w/zが現れたら、ただの分数と思うのではなく、w/z=αとしてみると「zにどんな複素数をかけたら(どんな回転・拡大・縮小を施したら)wになるのか?という質問の答え」がαであることがわかります。そうするとただの分数表示も図形的に考察を行うことができそうですね。ちなみに、複素数の表示の基本はベクトル表示(1文字z)、成分表示(x+yi)、極形式(r(cosθ+isinθ)でした。

なお、偏角について一般角θ+2nπのように表現した場合、nは整数ですから、整数の問題と融合されて出題されることは容易に想像がつきます。arg(zw)=arg(z)+arg(w)などを駆使して、手際よく処理を進められるようにしておきましょう。

4. 勉強法とおすすめ参考書の紹介

4.1 教科書内容の振り返り:公式や定理の総復習

教科書事項の整理と基本かつ典型的な問題の演習から理解を深めていくことからスタートしましょう。いくら慶應や早稲田といえど、難しい問題は基本事項の集約です。問題集に取り組み始めて最初のうちは、解答を見ても「何をしているのかわからない」「なぜここをtといているのかわからない」と着想自体が難しいと思うこともあるでしょう。数学の問題はひらめきで解くものではありません。適切な思考を経て解法が絞られていきます。また、そもそも知らなければできないものもあります(語弊がありますが、初心者の方の多くにとっては「知らないとできない」と言い切ってしまってもよいでしょう)。なので、5分から10分ほど考えてもわからないときはすぐに解答を見てしまって構いません

まず、模擬試験や学校の定期テストで、数字の変わった問題が出たら、何も見ずに解くことができるというのがこのステップのゴールです。

■教科書レベルの参考書
『白チャート』シリーズ(数研出版)

■教科書傍用問題集
『4STEP』(数研出版)
『エクセル数学』(実教出版)

■入試基礎レベル問題集

『大学への数学 入試数学基礎演習』(東京出版)
『大学への数学 数学Ⅲの入試基礎 講義と演習』(東京出版)

『数学Ⅲ 基礎問題精講』(旺文社)

このレベルがクリア出来ている方は、次に移ってください。

骨太な計算力も必要になりますので、計算系の問題集もこのタイミングで始めましょう。

『数学の計算革命』(駿台文庫)

カルキュール数学I・A [基礎力・計算力アップ問題集](駿台文庫)

『合格る計算 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』(文英堂)

4.2 典型・有名問題の解法を押さえる

次はもう少し難易度が高めである、大学受験で定番の問題の解法を押さえていきましょう。ここではいわゆる「網羅系参考書」というものを使用します。下に挙げる『青チャート』や『フォーカスゴールド』は非常に分厚いものです。終わらせられる時間がないという人は、『標準問題精講』に取り組んでみましょう。例題の解法をしっかり理解して習得できるようになることがゴールです。
このレベルもクリア出来ている方は次に進んで構いません。

『チャート式 基礎からの数学Ⅰ+A』(数研出版)

『チャート式 基礎からの数学Ⅲ』(数研出版)

『Focus Gold 数学Ⅲ』(啓林館)

『数学Ⅰ・A 標準問題精講』(旺文社)

『数学Ⅱ・B 標準問題精講』(旺文社)

4.3 解法のブラッシュアップ

4.2までで、受験基礎レベルの解法に対する理解は概ね深めることができました。次は受験本番にもう少し近しいレベル(受験標準レベル)のものを使って、よりハイレベルなテーマ、解法を押さえていきます。ここで最もおすすめなのは、『大学への数学 1対1対応の演習』シリーズです。標準レベルの問題が過不足なく収録されており、まさに慶應理工レベルの演習の土台となるものです。微積分の中でも、慶應理工で頻出である、定積分と不等式の関連問題や、平均値の定理を応用した極限を導出する問題などがしっかり紹介されています。

『大学への数学 1対1対応の演習』(東京出版)

なお、問題集に取り組むときは以下の点を大事にしてください。

1. 答案だけでなく考えたことも言語化・図式化してノートに書く
2. 自分の解法と問題集の解法を比較する
3. なぜその解法が正しいのかを考える
4. 1冊につき2回以上繰り返す

詳しくは「数学参考書・問題集の選び方・使い方とおすすめ参考書・重要問題集リスト! 高校生&大学受験生必見」という記事で説明しています。

ここまでくれば、数学的な考え方について相当熟達してきていると思いますので、極限・微分・積分の計算練習も始めることができます。『合格る計算 数学Ⅲ』では、かなり難易度の高いレベルまで計算を紹介してくれています。受験まで毎日15分程度でも構いませんので毎日計算して、手が勝手に動くレベルまで練習しておきましょう。

『合格る計算 数学Ⅲ』(文英堂)

4.4 応用レベルの演習:数学的な思考力を鍛える

さて、解法が押さえられたら、次は過去問、、といきたいところですが、まだ過去問に入っても制限時間内でとき切る力がついていません。しっかり練習をして、スムーズに思考を進められるように慣れておきましょう。

ここで大事なのは、しっかり時間をかけて1問1問考え抜くこと。5分10分で諦めるのではなく、30分から40分程度粘ってみましょう。この思考過程の中で、いろんな気づきを得られると思います。それが実際に本番の入試で問題と格闘するときにキモになってくるものです。

また、解答を書くときも本番の答案を書くと思って取り組みましょう。普段の練習で計算結果だけを示したり途中過程を省いたりしていると、いざ本番になったときに解答をどう書けばいいのか詰まってしまうかもしれません。書き方がわからなければ、学校や塾の先生に個別に指導を依頼してみましょう。

『実戦 数学重要問題集 -数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B』(数研出版)

『大学への数学 新数学スタンダード演習』(東京出版)

『大学への数学 数学Ⅲスタンダード演習』(東京出版)

『理系数学の良問プラチカ 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B』(河合出版)

『やさしい理系数学』(河合出版)

4.5 過去問・模擬試験を用いた演習

ようやく過去問演習に入りましょう。特に直近5年分ほどの問題について2周分取り組んでみてください。

それから模範解答や解説をよく読んで次の項目をチェックしましょう。制限時間内に解き終わらなかった場合はその原因をはっきりさせましょう。例えば次のような原因が考えられます。
・計算スピードが遅い
・解答はできたものの方針が見えなかったために無駄な計算時間を使ってしまった
・そもそも解法がイメージできずまったく手が出なかった
これらの項目を踏まえ、必要に応じて戻って復習しましょう。
また過去問は1度解いただけでは身になりませんから、繰り返し復習することも忘れずに。

(参考)
インターネット出願ガイダンス|2018年度 一般入学試験要項|一般入学試験 入学試験要項(抜粋版)