「自分の居場所がない」と感じて苦しんだ経験はありませんか? 2018年6月に正式オープンした、元不登校生たちが運営する中高生向けフリースクール『Riz』。不登校に悩む中高生たちに安心できる場所をつくりたいという想いで始まったフリースクールです。今回は『Riz』について、そしてスクール設立の経緯や今後の展望について、校長の中村玲菜さんにお話をうかがいました。

不登校を経験した中学時代

実は私も不登校経験者なんです。もともと私自身が学校に行きにくいと感じたのは、中学一年生のとき。中一の春にはすでに、学校でいじめられていました。悪口を言われたり、物を隠されたりすることが多くて、学校の先生に相談したこともあったんですが、なかなか解決に至りませんでした。クラスではいじめられ、先生は信頼できず、部活の子たちにも「いじめられている子」と見られたくなくてなかなか相談できないという時期があったんです。

すると朝、登校の準備をしていても、玄関から足を一歩踏み出すことができなくなってしまいました。体が動かないんですね。なんとか学校に行こうとしても、途中で体調を崩してしまうという日が続き、それから不登校になりました。中学1~2年の時、合わせて9ヶ月間ほど学校に行けていなかったと思います。ただ当時はフリースクールはあまり認知されておらず、カウンセリングや心療内科も特別視されていたので、なかなか外部の協力を仰ぐことができませんでした。

親としては学校に行って欲しいと思っているのが伝わってきたので、「学校に行きたくない」と家族に相談もできない。でも、無理して学校に戻ってもまたすぐに行けなくなってしまう。そんな中学時代でした。一方、高校生になってからは、部活でやりがいが見つかり、学校に行けるようになりました。学校以外でも、ボランティア活動やアルバイトにも積極的に取り組み始めて、いろんな場所で自分の居場所を感じられるようなことが増えてきました。


(写真:校長の中村玲菜さん)

苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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フリースクール『Riz』設立の経緯

それでもやはり、中学時代にもっと先生に相談できたり、気軽に話せる人がいたりしたら、もう少し明るい生活を送れていたんじゃないか、という想いをずっと心の内に秘めていました。そのため、将来は先生になって、学校の中で居場所がなくて苦しんでいる子どもたちが居心地良く過ごせるような場所をつりたいと考え、大学に進学しました。

もともとは教員免許を取ろうと思っていたんですが、大学進学後、教員についてより詳しく調べていく過程で、学校の先生はとても忙しいということを知りました。授業をきちんとしなければいけないのは当然ですが、そのための教材研究に加え、PTAや修学旅行の準備などの多くの事務作業があり、日々雑務に追われるようなんです。

私自身が中学生の時は先生に対して「なんでもっと助けてくれないの?」と思っていました。それが大学生になって初めて、これだけ忙しいスケジュールの中で、生徒一人一人に丁寧に対応するのは無理だな、と気づいたんです。将来、たとえ自分が学校の先生になったとしても、目の前にいる子どもたちのために100%エネルギーを割くことはきっとできないでしょう。そうなると自分が目指している目標と現実にギャップが生まれてしまうと感じました。

「このまま教員を目指していいのだろうか?」と葛藤を抱えていた時に、大学を一年間休学することに決めました。その間、アルバイトなどの様々な社会経験を積む中で、知り合った方からフリースクールについて話をうかがう機会がありました。その際、フリースクールならば「何時間勉強しなきゃいけない」「このタイミングでこういうことをしなきゃいけない」という枠も少ないので、一人一人のフェーズに合わせて、寄り添った対応ができると知ったんです。それなら自分がもともとやりたいと思っていた、不登校で悩む子たちの居場所作りに注力できると思い、フリースクール設立を決めました。

『Riz』の理念と特徴

不登校支援っていうと、学校復帰や大学進学を目指すところが多いと思うんですが、Riz では「なりたい自分になる」ことをとても大切にしています。学校に行けていなかったり、悩みを抱えていたりする子には「無理して学校に戻らなくてもいい」「自分のやりたいことが見つかったら、それに向かって行動できればいい」と伝えたいと考えています。実は『Riz』は”Realization”の略なんです。自己実現の場、「なりたい自分になれる空間」をつくるということを理念にしています。

Riz には、交流スタッフ・運営スタッフ・学習サポートスタッフがいます。中でも交流スタッフは、21~22歳くらいの大学3~4年生の方々が中心となり、中高生と普段接することに重きを置いています。スタッフに共通しているのは「学校に行きたくない」と思った時期があったり、不登校を経験したり、フリースクールに通っていた時期があったりすること。

私自身が中学生の頃、不登校で悩んでいた時は、親や先生にもなかなか相談できませんでした。大人という存在に対して苦手意識があったんです。だから、親や先生より近く、同世代の友だちとも違う、少し人生の先を行く先輩のような存在が近くにいてくれるといいなと思い、大学生の方々に交流スタッフになっていただきました。それが Riz の一番の特徴だと思います。


(写真左:校長の中村玲菜さん、写真右:団体代表の大薗翔さん)

『Riz』での1日の過ごし方

Riz は、10~17時までの7時間オープンしています。登校・下校時間が決まっているわけではないので、お昼過ぎに来たり、3時頃早めに帰ったりすることもできます。オープン時間内なら、好きなタイミングで登下校していただいて問題ありません。

基本的には朝登校し、受付で名札を付けてから「交流スペース」で自由に過ごします。そして勉強に集中する時間は「学習スペース」に移動し、各自学校の教科書や教材を使って勉強に取り組みます。

お昼ご飯はお腹がすいたタイミングで自由に食べてもらって構いません。ただ、みんなで何か一つのことに取り組む時間も大切にしたいと思っているので、お昼ご飯の後に掃除の時間を設けています。簡単に床を掃いたり、棚を拭いたりという程度ですが、その時間だけは、皆で一緒に掃除をしたいと考えています。

午後は自分がしたい勉強をします。「こんなことを学びたい」「こんな資格を取りたい」という子がいたら、学習スペースを自由に使うことができます。交流スペースで本を読んだり、おしゃべりをしたりすることもできます。

また、交流スペース・学習スペースの他に「相談スペース」もあります。皆には言いづらいけれど個別でスタッフに話したいことがある時、保護者の方がいらっしゃった時などに使います。

不登校で悩む子どもたちと親御さんに伝えたいこと

Riz を通して、無理して「学校に行かなきゃいけない」「皆と同じようにしなくてはいけない」と思わなくてもいいと伝えたいですね。Riz に通う中高生が今後、叶えたい夢や就きたい職業を見つけたときに、全力で背中を押せるような存在でありたいんです。たとえ一般的なレールからは外れても、自分のやりたいことが見つかった時は、その道を進めるように心から応援したいと思っています。

私はもともと将来中高生に対する支援をしていきたいと考えていたんですが、一番最初にそれを形にできたのは、18歳の時に立ち上げた10代向けのコミュニティサイトでした。これはネット上での活動で、中高生のためだけに立ち上げたサイトだったので、完全に当事者目線で支援をしていました。

でも、フリースクールを立ち上げることが決まってから、自分のお子さんが学校に行けなかったり、クラスになじめなかったりする中で悩み、葛藤している親御さんにたくさん出会うようになりました。今まで持ち合わせていなかった「保護者の方の視点」からも物事を考えるようになったんです。

今後、お子さんだけでなく保護者の方にとっても安心できるような環境を作っていきたいと思っています。お子さんのことで悩んでいることがあればいつでも相談にのりたいし、同じような悩みを抱える他の保護者の方と繋がりたいと思うのならばその横の繋がりを手助けするような活動もしていきたいですね。

そのために今、保護者の方々に対しての支援のための仕組み作りを始めています。一例として毎月、不登校のお子さんを持つ保護者向けのセミナーを開催しています。不登校の子どもは親にどのような行動を求めているのか、不登校の中高生はどのような心境の変化をたどって社会復帰に向かっていくのかについて、1時間程でお伝えする時間を設けています。こちらは Riz への入学を検討している・検討していないに関わらず、不登校で悩むお子さんを持つ親御さんなら誰でも歓迎です。また、入学していらっしゃるご家庭には、入学後1ヶ月、その後3ヶ月ごとに保護者の方と個別面談をし、スクールでの普段のお子さんの様子を細かくお伝えしています。

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「自分のやりたいことが見つかった時は、その道を進めるように全力で応援したい」。校長の中村さんのあたたかいメッセージに心動かされました。不登校で悩む中高生の居場所として、フリースクール『Riz』は子どもたちに安心感を与え、一人一人の夢の実現をサポートする空間となることでしょう。

Riz のホームページはこちら→ 元不登校生たちが運営する中高生向けフリースクール『Riz』