人生80年と考えれば、高校を卒業する時点の年齢である18歳はその4分の1にも達していません。長い人生、後でなんとでもなるとも思えます。

でも、「そうではない」と語るのは『危ない大学・消える大学』(エール出版社)などの著書でおなじみの経済評論家・島野清志(しまの・きよし)さん。大学の選び方次第では、その後の人生を限定してしまうことにもなるのだそう。どんな点に注目して大学を選べば、より良い人生を歩めるのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)

大学増加が止まらない今だからこそ、大学選びは慎重に!

大学が増えていることには、受験生にとってメリットもあります。当然ながら、入学しやすくなったということ。そして、入学するコースが複線化されたこともそう。推薦入試やAO入試など、以前はなかった入試システムを利用して、少ない負担で入学することが可能です。

一方で、デメリットもあります。大学がなくなるなんてことは、かつては考えられませんでした。行ったはいいが、卒業したら母校がなくなった……。そんなことでは、卒業生の履歴に大きな傷をつけることになりますよね。当然、在学中の学生にとっても大きな問題でしょう。2015年に廃止された神戸夙川学院大学の場合は、カリキュラムや学生、教職員を神戸山手大学が継承しました。ただ、それは都市部だったから近隣に大学があり、そうできただけのこと。地方にぽつんとある大学の場合、そういう措置を取ることも難しいですよね。

そういう現状を目の当たりにすると、個人的には、そろそろ大学の新設はやめたほうがいいと思っています。今年のはじめ、日本私立学校振興・共済事業団が読売新聞に開示した数値によると、私立大・短大を運営する660法人の17%にあたる112法人が経営難に陥っているそうです。そのうち、2019年度末までに破綻の恐れがある法人は21にのぼるのだとか。

それにもかかわらず、大学は増え続けています。申請書類がきちんとそろっていれば認可せざるを得ないというのが文科省のスタンスだからです。少子化が進んで学生数は減る一方なのに、大学は増え続ける。需給バランスを整えないことには、潰れる大学が出てくるのは当然のことです。そして、在学中の学生、卒業生の履歴に傷をつけることになる。監督官庁、行政の責任は大きいと思いますよ。

それだけではありません。これだけ大学が増えると、当然、その格差も広がります。インターネットが浸透したいま、一般的にレベルが低いといわれる大学はかわいそうに感じるほどネット上でたたかれる。しかも、それは採用サイドの企業も見ています。入学した大学で学生の評価が決まってしまうということです。でも、それは企業からすればある程度仕方がないことでもある。「レッテル貼り」と批判されることもありますが、エントリーしてきた膨大な数の学生一人ひとりに会うことは不可能だからです。現行の就職システムでは、人間性を見抜いて採用するということは難しい。だからこそ、大学は慎重に選ばなければなりません

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まずは、少なくとも潰れない大学を選ぶべきでしょう。それは、日本私立学校振興・共済事業団が運営する「大学ポートレート」というウェブサイトを見ればすぐにわかります。志望大学の定員を在籍学生数がきちんと満たしているかどうかチェックするのです。なかには在籍学生数が定員の7割とか6割とか、下手すれば4割というところもある。そういう大学はおすすめできません。少子化とは言っても、いまが底ではありません。それなのにそういう状態だということは、この先、潰れる可能性が高いということですから。

そういう意味では、歴史を重視することも大切です。100年の歴史がある大学というのは、たとえ難関校ではなかったとしても、それだけ人が集まり続けた大学だということ。同じレベルの大学であれば、歴史が長いほうを選ぶべきでしょうね。

あとは規模の大きさも重要でしょう。長い人生を18歳くらいで決め打ちするべきではないからです。わたしも大人になってこんな商売をしているとは若い頃には思いもしませんでした(笑)。思ったふうにいかないのが人生というもの。でも、単科の大学を選んでしまったらどうでしょうか? 在学中にちがう道を歩みたいと思っても、その道はその大学にはありません

いまは大学によっては転部や転科も割としやすいものです。であれば、多くの学部、選択肢がある大学を選ぶべきだと思うのです。そういう大規模な大学を選べば、卒業してからも強みを発揮できます。なぜなら、同じ大学出身者という人脈によって仕事に発展することもあるからです。

また、当然かもしれませんが、できるだけ難関大学を目指すべきです。というのも、大学のランクが上がれば上がるほど、職業選択の幅が広がるからです。これは紛れもない事実。弁護士になりたい、あるいは公務員になってキャリアになりたいと思っても、一定程度以上の大学に進まなければ、それは限りなく不可能に近いことです。

このようにして志望大学を絞ったら、やるべきことは、とにかく「素直に勉強する」こと。若い受験生なら、どこか斜に構えてしまうこともあるでしょう。でも、大学の先生も学習塾の先生も進学校の校長も、多くの教育者が「素直が一番」と口にする。わたしの周囲でも、難関大学に進んで学者をしているような高校時代の同級生はとにかく素直でした。「学校の勉強なんてなんの役に立つんだ」「受験のためだけのものだ」なんて思わず、ぜひ、素直におもしろがって勉強に励んでください。

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危ない大学・消える大学2019年版

島野清志

エール出版社(2018)

【プロフィール】
島野清志(しまの・きよし)
1960年生まれ、東京都出身。経済評論家。早稲田大学社会学部中退後、公社債新聞記者、一吉証券(現いちよし証券)経済研究所を経て1992年に独立。以降、教育をはじめ、経済、株式などについての著述、評論活動をおこなう。1993年から続く『危ない大学・消える大学』シリーズ(エール出版社)の他、『この会社が危ない』『この会社が勝つ』『就職でトクする大学・損する大学ランキング』各シリーズ(エール出版社)など著書は100冊を超える。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。