高校中退後、日雇い派遣、路上スカウト、キャッチ、夜の仕事などを転々としながら、荒んだ生活を送っていたひとりの青年がいました。彼の名は西垣和紀(にしがき・かずき)氏。当時は人生に行き詰まり、稼いだ金はすべてブランド物の服や酒に消え、毎日朝方まで飲み歩くといった自堕落な生活を送っていたのだそう。

しかし、ある日、経営コンサルタントの大前研一氏の存在を知り「自分も経営コンサルタントになる」と決意。コンサルタントに必要な英語力とビジネススキルを学ぶべく、留学を志します。そして中学レベルの英語力から徹底的に鍛え直し、見事アメリカ西海岸の名門・カリフォルニア大学サンディエゴ校に入学。マネジメント・サイエンス(経営科学)を学びながら、統計・金融・経済学といったコンサルティングに必要な知識を習得しました。

そして大学卒業後は、グローバルコンサルティングファームの東京オフィスに就職し、ついに夢を実現。数年後にはTimes世界大学ランキング1位のオックスフォード大学にてMBA(経営管理学修士)を取得し、現在はロンドンの会社で働いています(※詳しくは『高校中退の不良がなぜオックスフォード大学MBAを取得できたのか?』参照)

そんな西垣氏は、キャリア形成のための重要事項として以下の3つを挙げています。

1.「求められていること」が存在する分野で、
2.「やりたいこと」を見つけ、
3.「できること」に変える

つまり、「求められているもの」が世の中に存在して(顕在化しているかしていないかは別として)、そのなかでやりたいことを知る、認識する、あるいは何かに感動して自分もやりたいと思う。そして、やりたいことが決まったら学習・修行して、それを「できること」に変えるということです。

西垣氏のような、海外で活躍する “グローバルエリート” になるにはどうすればいいのか? 海外で働くことの魅力や難しさとともに、語っていただきました。

 戦略責任者として “スリリングな日常” をおくる日々

まず初めに、私が留学を志すきっかけとなった「コンサルタント」という職種についての話から始めましょう。コンサルティングの仕事は多岐にわたるため、一概には説明しづらいのですが、一言で言うと「クライアントの課題解決を支援する」ことが仕事です

少し前までは、例えば「会社の売り上げを上げたい」「会社のコストを削減したい」「新商品のマーケティングをしたい」といったクライアントからの要望に対して、“徹底的に考える” ことで付加価値を提供していました。しかし最近では、ただ考えるだけでなく、クライアントと一緒にプロジェクトを遂行したり、プロダクトを一緒に作ったり、出資してクライアントと一緒にJV(ジョイントベンチャー)を設立したり……といった “一歩踏み込んだ支援” が増えてきています。私もコンサルティングをしていたころは、戦略策定から業務支援から会社設立に至るまで、本当にいろいろな経験をさせていただきました。

しかし一方で、私のように新卒でコンサルティング会社に入社する人の多くは、「事業会社で働きたい」と思うようになるものです。というのも、いくらコンサルタントが実行支援まで踏み込んでやると言っても、事業を行なう主体ではないので、どうしても「実際に自分でビジネスを動かしてみたい」と感じてしまうのです。

コンサルティング会社で数年間働いたあと、私はオックスフォード大学のMBA課程に留学し、現在はロンドンのテック系企業で戦略責任者を担っています。今の主な仕事は、事業計画策定、マーケティング・PR、製品ローンチのためのプロジェクトマネジメント、投資家対応、データ分析・調査……といったように多岐にわたります。

小さなスタートアップの会社ではありますが、本当に優秀な人材が集まっています。テスラモーターズのイーロン・マスク氏が構想した高速鉄道ハイパーループのスタートアップメンバーや、国際法律事務所ベーカー&マッケンジーで働いていた弁護士、NASAやMITで働いていたエンジニアなどが同僚として働いているのです。そして、このような優秀な人たちと一緒にプロダクトを作り、世に送り出そうとしています。

最高の仲間がいる安心感がある一方で、スタートアップならではの不安定さもあります。毎日のように問題が起き、みんなで解決して乗り越える——そんなスリリングな、でも非常に充実した日常を送っています

苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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「海外で働く」3つのパターン

私は現在イギリスで働いていますが、海外で働くには、主に下記のようなパターンがあります。

1. 日本で雇用され、駐在員として海外に派遣される
日本で就職して海外の支社に派遣されるといったパターンです。最も多いパターンではないでしょうか。

2. 日本企業の海外法人で雇用される
日本人や日本語を話せる人を募集している日本企業の現地支社などで雇用されるパターンです。人材会社が求人を扱っていたりと、こちらも比較的多いパターンです。

3. 現地企業に雇用される
現地の企業に直接雇用されるパターンです。日本語を話せる人を募集している場合は別ですが、上記2つに比べて難易度は高めです。

ちなみに私は3つめのパターンです。ハードルは高いものの、個人的にはこれが一番のおすすめです。

1つめと2つめは、日本人・日本語人材として雇われているため、日本企業や日本人顧客の対応をしたりと、日本でやるのと実際の業務内容がそれほど変わらない場合が多々あります。一方、現地企業に直接採用される場合、雇われているのはほぼ100%が現地の人です。私が海外の現地企業で働いている理由のひとつとして「ユニークな存在になれる」ということが挙げられます。日本人、あるいはアジア人は、私以外ほぼいません。日本人というだけでユニークな存在になれるのはもちろん、将来日本に戻って働く可能性があるとすれば、海外の現地企業で働いていた日本人は珍しいもの。これもまたユニークな差別化ポイントになります。

「現地企業に雇用される」ことの難しさ

一方で、デメリットを挙げるとすれば、やはり言葉・人種・文化・ビザの問題などがあり、雇用されるのが難しいという点でしょうか。例えばイギリスですと、まったく同じスペックのイギリス人と日本人がいたら、イギリス人を雇用するのが普通です。また、エンジニアやヘルスケア関係の職種など人材不足気味の職種は現地企業でも雇われやすいものの、ビジネス系の人材は労働市場に溢れ返っているため、外国人は雇用されにくくビザも取りにくいという側面もあります

MBAを取得していたとしてもかなり難しいというのが現状です。現に、私のMBAの同級生にも、現地での就職を望んでいたものの、それが叶わず母国に帰っていた人が多くいます。

というように、貴重な経験ができるのはたいへんすばらしいですが。そもそも雇用されるのが難しいのです(現地企業に雇われるために私がやったことは、またの機会にご説明したいと思います)。

「海外での仕事」で得られるもの

現地企業で働くのはハードルも高いですが、当然たくさんのメリットもあります。先に述べたように、日本では出会えないような優秀な人たちに会えること自身をユニークな存在として差別化できること。当然、語学力の上達も期待できます。そして同時に “日本との比較ができる” ことも大きいですね。つまり、日本国内で日本人と働いているときには当たり前だと思っていることでも、海外で働いてみると、その常識が覆されるのです。

例えば、ワークスタイルは非常に良い例です。私の会社では、毎日オフィスに来る人はあまりいません。“結果を出していれば、働く場所はどこでもいい” という考えだからです。マンチェスターなどイギリスの別の場所で仕事をしている人もいますし、アメリカの西海岸で仕事をしている人もいます。ヨーロッパで旅をしながら働いている人もいるくらいです。

また、オフィスに来るとしても、午前中だけ来る人もいれば、午後だけ来る人もいます。休暇だって、1ヶ月休むのが普通だったりします。このように、ワークスタイルは非常に自由ですが、仕事は厳しく評価されるという印象です。日本のように長時間労働が評価されることはありません。

また、会社の規模にもよりますが、資料作成といった作業は本当に最小限です。日本では、社内の人たちを説得するために膨大な資料を作成します。実際に資料作成だけが仕事になっている人も多いと聞きます。私も、イギリスの会社で働き始めて最初のころは、積極的に視聴を作ったりドキュメンテーションを行なったりしていました。しかし、ある日CEOに「資料なんか作らなくていい」と言われたのをきっかけに、海外では資料作りそのものはそれほど評価されないことに気づかされました。

このように、イギリスのみならずヨーロッパの国々は、日本と比べると、自由度が高い働き方で、そのぶん効率的に仕事を行なうという意識が高いのです。また、彼らは日本人よりも仕事も人生も楽しんでいる気がします。

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海外の現地企業で働くと、日本企業で働くのとはまた違うすばらしい経験ができます。機会があれば、ぜひトライしてみてください。

【著書紹介】
高校中退後、日雇い派遣、路上スカウト、夜の仕事などを転々とし荒んだ生活を送るが、ふとしたことがきっかけで人生が一変。中学生以下のレベルの英語力から海外留学を果たす。カリフォルニア大学での「知」の授業、オックスフォード大学のリーダーシップ教育から学んだ戦略的思考法のフレームワークを明かす――

オックスフォード大学MBAが教える 人生を変える勉強法

西垣和紀

二見書房 (2018)