高校中退後、数年間定職にも就かず、日雇い派遣や路上スカウト、夜の仕事などをしながら荒んだ生活を送っていた、ひとりの青年がいました。しかし彼は、とあるきっかけで人生を180度変えることに。

彼は基礎レベルから英語を勉強し直し、名門カリフォルニア大学サンディエゴ校へ入学。卒業後はグローバルコンサルティングファームで働き、その後オックスフォード大学の経営大学院でMBAを取得。現在は、ロンドンの会社で戦略責任者として働くかたわら、日本人の留学やキャリア支援も行なっています。

2018年7月に刊行された『オックスフォード大学MBAが教える 人生を変える勉強法』の著者・西垣和紀(にしがき・かずき)氏は、何をきっかけに、どのようにして人生を変えていったのか。どん底からの大逆転ストーリーを赤裸々に語ってくれました。

高校中退後の荒んだ生活

私は中学校を卒業後、親元を離れて生活したいということで、地元から少し離れた寮のある高校に入学しました。しかし、警察沙汰になるようなことをやったり、裁判所から何度も呼び出されたりと素行が悪かったせいで、1年経たずして寮を追い出されることに。高校も2年ほど通ったところで退学することとなりました

高校を辞めてからは、何のあてもなく大阪に行きましたが、仕事はまったく見つからず、日雇いの派遣をして日銭を稼いで食いつなぐ日々。当時はちょうど、派遣会社によるマージンの搾取が社会問題となっていた時期でした。派遣の日当からいろいろとしょっ引かれ、手元に残る給料はごくわずか。まさに搾取される生活をしていたのでした。

そのような生活を数ヶ月続けていたある日、路上で見知らぬおじさんに誘われ、路上でのキャッチやスカウトといった夜の仕事を始めることに。すると、日雇い派遣のときとは一転、急にお金が稼げるようになったのです。調子に乗った私は、ブランド物の服を買いあさったり、キャバクラなどで飲み歩いたりするように。毎日のように朝まで飲み歩き、出勤のサラリーマンと並びながら蕎麦を食べて家に帰り、夕方に仕事へ出かけるというような自堕落な生活を送っていました。

しかし、このような生活も長くは続きません。ある日、仕事でミスをしてしまい、“怖い人たち” から追われる身になることに……。朝起きると留守電が50件。「指を詰めろ」「殺す」といった罵詈雑言が入っており、精神的に追い詰められた私は自宅に引きこもることになったのでした

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人生を変えることになる “ひとつの転機”

働かずに家に引きこもっていたせいでお金も底をつき、私はようやく「こんな自堕落な生活をしていてはダメだ。とりあえず外に出て何か仕事をしよう」と思うようになりました。しかし、雇ってくれるところなどあるはずもなく、かといって日雇い派遣の搾取される生活にも戻りたくありません。詐欺でも何でもいいからとにかく金を稼ごうと、詐欺や悪徳商法に関する本を買いあさって読んだりしたものの、どれもピンと来ないものばかり。

そんなもどかしい生活を送っているなか、ある日書店に行って何気なくビジネス雑誌を手に取ると、経営コンサルタントの大前研一さんが書いているコラムに目が留まりました。そのときは経営コンサルタントという職業さえも知らなかったので、「世の中にはいろんな人がいるんだな」と感じた程度でしたが……後日、大前研一さんの『企業参謀』という経営の専門書を読み、衝撃を受けました。「論理的に考える」「徹底的に思考する」といったプロセスが克明に描かれており、思考することの大切さを痛感したのです

それまでの私は、物事について深く考えたり、論理的に答えを導き出したりといったことをいっさいしてきませんでした。当時の私にとって、この『企業参謀』に書かれているような思考法は非常に衝撃的だったのです。

とはいうものの、肝心の本の中身は、冒頭の導入部分以外はまったくと言っていいほど理解できませんでしたが……。しかし、この本を読んだのがきっかけで、「知りたい」「理解したい」という知的好奇心が湧いてきました。こうして、不真面目な不良だった私は「学びたい」と思うようになったのです。そしていつしか、「自分も経営コンサルタントになりたい」と志すようになりました。

中学レベルの英語からスタートし、カリフォルニア大学サンディエゴ校への入学を果たす

私がアメリカへの留学を決意したのは、コンサルタントに必要なビジネススキル・英語力・国際感覚を同時に効率的に学べるベストな手段が留学だと考えたからでした。しかし、当時の私の英語力は中学生以下。なにせ、funを「フン」と読んで友だちにツッコまれるほどでしたから(笑)。いきなり渡米しても生活すらできないだろうということで、まずは日本で「This is a pen.」の中学レベルから英語の勉強を開始することにしました

基礎も何もない状態からのスタートだったので、私が最初に取り組んだのは、基本的な単語や文法などの基礎練習です。まずはTOEIC300点レベルの単語を毎日20個覚えるところから始めました。300点レベルが終わったら400点レベル、それが終わったら500点レベルと進めていきます。そして500点レベルが終わったら、普通の人であれば600点レベルに移るところでしょうが、私は500点レベルの単語をとにかく完璧に覚えました。文法に関しても同じで、基本的な英語の5文型を読み解く練習をひたすら繰り返し、無意識に文の構造がわかるようにしたのです。英語の勉強を開始してからの1年程度は、とにかくこれらをやり続けました。

(ほかの勉強はあまりやらなかったので、渡米してからもしばらくは、時制(現在・過去・現在完了など)や関係代名詞や冠詞といった細かい部分は全然わかりませんでした。でも、細かいことが完璧にわからなくても、基礎さえわかっていれば、ある程度の会話は成り立つものなのです)

基礎ができたら、あとは実践あるのみです。アメリカの語学学校を経てカレッジに入学し、必死で勉強をしました。そして無事に、カリフォルニア大学サンディエゴ校に入学することができたのでした

コンサルタント時代の葛藤

大学入学後はさまざまな人に出会い、たくさんの刺激を受けました。一方で、学べば学ぶほど自身が無知であることもわかってくる。時には自分の無知さ加減に嫌気がさすこともありましたが、全体を総括して見れば、本当に多くの「学び」があった大学時代だったと思います

大学卒業後はグローバルコンサルティングファームに就職しましたが、入社直後は右も左もわからず苦労しました。新卒でコンサルティングファームに入社する人は、一流高校・一流大学出身の非常に優秀な人たちが多く、外資系企業のインターンシップや大学の研究室などで鍛えられた人たちばかりです。新人研修のときには、みなが果敢に議論を交わしていましたが、私はほぼ発言することもできずに研修を終えることに……。そのままプロジェクトにアサインされました。

新人の頃は周りのコンサルタントについていくので精一杯でした。しかし、毎日早朝から深夜まで、時には土日や休日も働き、難易度の高いプロジェクトをこなしていくうちに、仕事にも慣れていきます。社内でも評価されるようになり、その結果すっかり居心地がよくなってきました。このままコンサルタントを続ければ、高い年収を手にできるも同然です。

しかし、私は考えたのです。居心地がよく、それなりに高年収で恵まれた環境にいつまでもいていいものなのか、自分は本当に社会の役に立っているのだろう、と。

私はこれまでの人生の中で、新しい「知」を得ることで学び続けることができるようになりました。そこで、また新しい「知」を得るという意味でも、自分の今後のキャリアや人生を深く考えるという意味でも、仕事を辞めて大学院に行こうと決意したのです

そしてオックスフォードへ——

働きながら短期間集中して勉強し、アイビーリーグ校(※アメリカのトップ大学)を含むいくつかの大学院から入学許可を頂きましたが、最終的にオックスフォードに決めました。授業やプロジェクトなどからさまざまな学びが得られ、最終的にMBAを取得できたことは、もちろん価値があります。しかし何よりも、多くの多才な人々に出会って学校内外にすばらしいネットワークを築けたことは、今後の人生で大きな財産になると考えています

例えば、最も仲がよかったクラスメートのひとりは、マッキンゼー・アンド・カンパニーというコンサルティング会社で働きながらプロの音楽プロデューサーをやっていた変わり者でした。在学時は彼と一緒にずっとバンドをやっていましたし、卒業後の今もロンドンで頻繁に会う仲です。

さまざまな選択肢があったなかで最終的にオックスフォードの大学院を選んだのは正解だったと、私は心からそう思っています。

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私はこれまでの人生で、何度も失敗や挫折を経験してきました。おそらくこれからの人生でも、失敗や挫折の機会はやってくることでしょう。しかし、人生の早い時期に失敗や挫折を経験することができてよかったと思っています

私は高校を中退し、中卒の学歴で働き始め、1日数千円の日当を稼ぐ日雇いの派遣も経験しました。そのようなどん底の状態から、また中学生以下の英語力から一念発起して勉強を始め、アメリカのカリフォルニア大学、そして世界大学ランキング1位のオックスフォード大学の大学院に進学しました。

勉強をしていると、なかなかうまくいかなかったり伸び悩んだりすることも多々あります。それはきっと「勉強のやり方」が間違っているから。結果を残した先人たちの勉強法や自分に合った正しい独学法を実践すれば、良い結果は必ず生み出せます。

勉強は “一生ものの財産” を自分にもたらしてくれます。ぜひとも諦めずに勉強に取り組んでください。

【著書紹介】
高校中退後、日雇い派遣、路上スカウト、夜の仕事などを転々とし荒んだ生活を送るが、ふとしたことがきっかけで人生が一変。中学生以下のレベルの英語力から海外留学を果たす。カリフォルニア大学での「知」の授業、オックスフォード大学のリーダーシップ教育から学んだ戦略的思考法のフレームワークを明かす――

オックスフォード大学MBAが教える 人生を変える勉強法

西垣和紀

二見書房 (2018)